NV center(Nitrogen-vacancy center)

1.研究の背景と達成目標

ダイヤモンド中の窒素一空孔複合体中心(ダイヤモンドNV中心)は周りの環境に存在するスピンをセンシングするプローブとして高い性能を秘めていることが判ってきた。

ダイヤモンドNV中心を探針として用いた新奇なダイヤモンドNV中心付走査スピンプローブ顕微鏡(ダイヤモンドスピンプローブ顕微鏡)を開発し、これを用いた単一電子スピンの検出を実現する。さらには、核スピンの検出も視野に入れた研究に取り組む。

 

2.主な研究成果と社会、学術へのインパクト

ダイヤモンドロッド中のNV中心(窒素空孔複合体中心)に存在する単一スピンを読み出す共焦点顕微鏡装置と、このダイヤモンドロッドを探針として用いた水晶振動子型原子間力顕微鏡(AFM)装置を融合した走査ダイヤモンドスピンプローブ顕微鏡を開発した。

 

本研究で開発したスピンセンサー走査プローブは、性能を追求してゆけば究極には単一電子スピンや単一核スピンの感度と空間分解能で周りの環境に存在するスピンのダイナミクスの局所計測を実現できる。これにより電子スピン共鳴(ESR)、核磁器共鳴(NMR)等の技術において試料中の平均的な情報として得られていたスピンダイナミクスの情報を単一スピンレベルで明らかにできる可能性を秘めており、磁性体中のスピンの微視的なスピン状態の計測や1細胞中の核磁気共鳴(NMR)計測の実現などスピントロニクスデバイスや生命科学分野に貢献できる有用なツールとなる。

 

 

 

diamond bulk

  NV  center(Nitrogen-vacancy center)はダイヤモンド面心立方格子中にN原子を注入しC原子を置き換えると、隣接するC原子が欠損した構造をとる。

  このNV centerに含まれる電子スピンは室温、常温・大気圧下で高感度な磁気計測を行うことができるとして現在世界中で研究が進められており、わが研究室でもその新奇な現象を追っている。

How to make the NV center?

JAISTにはNV centerをダイヤモンド内に作成するため、国内でも珍しいイオン注入装置(GIFS)を所有しており、

N⁺ ionを直接ダイヤモンドに照射し、数nmオーダーの領域にNV centerを作成することができる。

High Power High temperature Diamond:

15N Irradiation temperature 600° implantation

 

35keV 1.2×1011/cm2

光学的磁気共鳴検出法(Optically Detected Magnetic Resonance, ODMR)
磁気共鳴現象を光学的に検出する手法。本研究では532ナノメートルのレーザー光入射により励起・生成されたマイクロ波印加による蛍光強度の変化を計測しNV中心スピンの磁気共鳴を検出する。

緑色のレーザー(532nm)によって励起された電子スピンはその緩和過程において赤色の蛍光を発します。このときマイクロ波のエネルギーを加えることによって0という準位にあった電子が1という準位に移行します。この1に移行した電子は確率的に蛍光しない過程を通るため、蛍光が弱くなります。

 

さらに外部からの磁場の影響でms=±1は外部磁場強度に比例してゼーマン分裂するため、赤色光輝度の低下点の周波数から外部磁場強度を検出することができます。